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かすかなしるし [音楽系]

SUBLIMINAL CALM

SUBLIMINAL CALM

  • アーティスト: SUBLIMINAL CALM
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 1992/02/21
  • メディア: CD
SUBLIMINAL CALMというグループを知っているだろうか。グループというかユニットですね。SUBLIMINAL CALMとは、いとうせいこう+藤原ヒロシという非常に豪華なメンツががっぷり四つに組み割と正統派J-POP、らばーずみゅーじっくってヤツですか?それに取り組んでいたユニット。あの“いとうせいこう”が切々と恋心を歌い上げる…といった時点でかなりの胡散臭さが漂ってしまうのだが、そういう先入観をヌキにすると耳に残るグッと来る曲もある。それが「かすかなしるし」。
以前JRのCMでUAが唄っていたバージョンが流れたそうだが、そのオリジナルがこちら。いとうせいこうの、不安定で、どちらかというとウィスパーボイスに近い微妙な音程の歌声がストリングス、ピアノと相まって実に切ない、後味のキレがよい仕上がりになっている。ただどうしても“いとうせいこう”というある種のイメージに囚われてしまいこちら側へナカナカ直截に浸透しないのが残念だ。この曲のPVもよかった。映画のフィルムへ本人達をとけ込ませたようなハンパに前衛的な感じが。

この曲ともうひとつ、オリジナルラヴの「月の裏で会いましょう」が私のある年代を象徴する曲であったりする。
THE VERY BEST OF ORIGINAL LOVE

THE VERY BEST OF ORIGINAL LOVE

  • アーティスト: オリジナル・ラブ, ORIGINAL LOVE, 小西康陽, 田島貴男, 木原龍太郎, 宮田繁男
  • 出版社/メーカー: 東芝EMI
  • 発売日: 1995/04/28
  • メディア: CD

中高時代、スペースシャワーTVをよくつけっぱなしにして読書したりしていた。そのとき、このSUBLIMINAL CALMの「かすかなしるし」とオリジナルラヴの「月の裏であいましょう」が何故かセットで流されることが多かった。「月の裏~」が流れるとその後「かすかなしるし」だったり、またはその逆とか。双方の歌が好きだった私は迷わずビデオ録りし、田島貴男の明朗で滑舌の良い発音のおかげで「月の裏であいましょう」は曲を買わずともビデオで歌詞を覚えてしまったぐらいだ。(結局始終聞いていたいのでCDは買いましたが。)この「月の裏で会いましょう」は“愛の奇跡”などといった現実離れした言葉が頻発するのだが不思議と、この伸びあがる耳馴染みの良いクラリネットのような声で唄われるとしっくり、ごく普通にうなずけてしまうから不思議だ。iTuneで視聴できるので是非聞いてみて欲しい。だいたいにおいて私はオルガンのようなエレピの音にはかなり弱くそういう音が入っているだけで無条件によしとしがちなのだけれど、それを差し引いてもテンポ良くキレがよいメロディが実に心地よい。繰り返し聞いても飽きることがなく、こうして10年以上経過しても再び聞きたくなる。味わいのある曲なのだ。
思い出せば。
膝を抱えて夜を過ごし、読書もなにもする気になれずタダぼんやりとTV画面だけをみていたあの頃。そうしてその夜の永遠性をかたくなに信じていて。柔らかなボーカルが右の耳から左へ放物線を描いておちていく。
いまもまた眠れずに夜を過ごしこの曲を流し込みながら私は思う。
 
「ああ 私は あなただけを 愛してる」

84歳ラッパーの声を聞け!交通地獄と借金地獄、アナタならどっち!? [音楽系]

交通地獄そして卒業

交通地獄そして卒業

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Pヴァイン・レコード
  • 発売日: 2005/11/18
  • メディア: CD
「三千マ~~~~ン」
と明るく明朗な声で歌ってみた。なんのことやらというわけでご紹介するのは「交通地獄…そして卒業」。 この坂上弘さんは御年84歳。84歳の年齢を吹き飛ばすかのごとくラップ。84歳とラップではどうしても間に入るのは昨日の残りのおかゆだか雑炊だかというノリなのだが、まずは聞いてびっくり。のどを震わせるような美声にまずノックアウト、凄惨な事故にあった内容をダイレクトにラップするそのライム(バターン、キュゥ)にノックアウト、さらにさらにちょっとズレたリズムに飄々とのりまくる「三千マーン」にボディブローでスリーカウントとられて終了。こんなすごいのは滅多にない。ぜひ聞くべし。なにがなんだかわからないだろうけど、だがそれがいいのだ。 個人的にはこれでもう言うことはないのだが、このまま終了としてしまうのはあまりにも不親切なのでかいつまんで説明。この歌は、坂上さんの実体験を基にしている。「甲州街道をバイクで進み、そよ風きって走っていると」突然トラック野郎に「追突されてOH!NO!アタマからまっさかさまに地面にぶつかりバターン(キュゥ)」地獄の閻魔様の台帳には名前が載ってないので生き返って、リハビリに苦労したけど「保険慰謝料三千万!」手にして「花のキャバレー一直線」そこで「見目麗しきリンダちゃーん」と出会うが…「巻き上げられてOH!NO!」という内容である。文字にするとかなりすさまじいことになっているが、「からん~からん~困ったね~」と歌のほうはいたって暢気。「あーっという間にすっからか~ん」なんて聞くとなんとなく楽しそうな気すらするから不思議だ。この「すっからか~ん」には坂上マジックとでもいうべき呪文効果があり、なんとなく気がつけば「すっからか~ん」と口ずさんでいたりする。まさに魔力あふれる傑作CDと言える。 曲順は以下のとおり。 1、交通地獄 2、卒業 3、やまと寿歌 4、恋しのアンヂェラ 5、借金地獄 6、交通地獄 Remix 7、卒業(ライブ・バージョン) このうち、必聴はなんといっても「卒業」と「借金地獄」。ちなみにこの「卒業」は持ち歌の「交通地獄」よりも評判がよい。だってねえ、80過ぎた爺さんが「センセイ!アナタはかよわきオトナの代弁者なのか」と声を震わせ絶叫するんだもの。それがいいンだな。「信じられぬ大人との~」という歌へ“おめえはオトナじゃねえのか”なんていう無粋なツッコミを鏡の如く跳ね返す笑顔。
↓裏ジャケット参照。
年寄りじみて物のわかったような発言されるよりは、何歳でも不良やってるような姿に、やっぱり惚れますねえ。男とはかくあるべし。 「借金地獄」は“シャッキンシャッキン”というリフレインが耳から離れなくなること必須。気がつくとシャバダバダーなんて歌っていたりして。脳への染み付き効果絶大。 84歳の挑戦、アナタは受けて立てるか否や。
視聴したい方はコチラ
※先日、新宿タワーレコードで行われた坂上さんのイベントへ参戦してきたのですが、いや実にお元気。パワー全開で歌っておられました。店全体が歓喜で震えたように感じたのは、私だけではない、はず。

【リメンバー・ミイ】ちあきなおみVIRTUAL CONCERT 2003 [音楽系]

ちあきなおみ VIRTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家

ちあきなおみ VIRTUAL CONCERT 2003 朝日のあたる家

  • アーティスト: ちあきなおみ, 水谷啓二, 倉田信雄, ちあき哲也, 小椋佳, 服部隆之, 飛鳥涼, 瀬尾一三, 友川かずき, スクランブル
  • 出版社/メーカー: テイチクエンタテインメント
  • 発売日: 2003/04/23
  • メディア: CD
久しぶりにテレビで動くあの人をみた。
 
凛としてしなやか。その歌声は地に足をどっかりとつけたかの如く磐石で、ゆるぎない。張りがある声が透明感を漂わせながら闇を貫く一筋の光のようにまっすぐこちらへ切り込んでくる。だが彼女の歌は私たちを包み、くるみこんでくるように暖かい。
 
放映された番組は、彼女のそれまでの出演場面から構成されていて、10代の妖艶で、しかも消えた時点の容姿とあまり変わらない姿に驚いたり、デビュー当時からあの歌唱力だったことに感嘆したり、彼女のインタビュー映像を見て、この人はかなり男っぽい性格なんだな、と実感したり。船村徹や梅沢富美男など、関係者からの談話もあるが長々やるわけでもなく、基本的には彼女の歌を流すことに終始しており、この番組を制作したスタッフも、彼女の歌を愛している様子が伺えてうれしかった。
 
彼女が歌わなくなってもう何年になるのだろうか。
 
これほど「もう一度」と本来的な意味で復活が切望されている歌手は彼女ぐらいだろう。たとえば山口百恵などは復活をラブコールされているが、どちらかというと大衆の視線はややもすれば彼女の歌をナツメロ視線、歌そのものよりも彼女の歴史を目の当たりにしたいというある種の低俗なものがたぶんに含まれているのは否めない。だが彼女の復活を切望している人たちはそうだろうか。彼女の歌わなかった歴史よりも、その年齢であの歌をどう歌うのか、その一点に興味があるのだろうし、本物の歌手が少なくなったと言われる今だからこそ演歌であってもジャズであってもブルーズであっても器用に歌いこなし、その情感を自分のものとしてアレンジして提供できるその応用力が必要とされるのではないだろうか。
 
その番組を見終わって、久しぶりに彼女のライブ盤を聞いた。番組の中で流れた「朝日のあたる家」をもう一度、どうしても聞きたくなったからだ。「朝日のあたる家」はこのVIRTUAL CONCERT2003にしか、収録されていない。
 
アニマルズでのエリック・バートンの絶唱を覚えている人も多いと思うこの曲はもともとアメリカ民謡らしい。ちあきファンの間では幻の絶唱と賞されているそうだ。彼女は原曲で歌ったわけではなく、ある歌手が訳詩したものをややドラマチックに詠唱した。なるほど。確かに『幻の』と冠つきになるのもうなづける。あの歌手の訳詩をここまで歌いこなせることに驚嘆した。そのある歌手とは、伝説のアングラブルーズ歌手の浅川マキである。
 
浅川マキは、寺山修二プロデュースでデビューして以来、ずっと自身の音にこだわり続け、メジャーとは軌を一にしない音楽活動を展開してきた。その浅川マキ+ちあきなおみという組み合わせはかなり異色で、たとえるならば福山雅治に山口富士夫が楽曲提供したようなものだろうか。かなり強引な例えであることは重々承知ではあるけれども、まあそれほど隔たりが感じられたわけです。しかしこの例え書いてみてこれ実現しそうだなとふと思ったり。現在はそういう意味で明確な仕切りというか垣根は存在せず、それを取っ払うこと自体が、アーティスト魂の発露という肯定的な捉え方をされているフシがある。だが翻って当時、もっとメジャーマイナーの区切りがはっきりしていた状況を考慮すれば、アングラと紅白常連歌手という“階級差”は厳然として屹立していたのではないだろうか。そういう中で毅然と好きな歌を歌うという姿勢を貫いている姿は実に清清しく、男らしいな、と震えてくる。
 
だがあの癖の強いマキ節をどう処理するのだろうか、と身構えて聞いている自分が馬鹿らしくなるほど彼女は飄々と歌う。平成も17年、そろそろ未成年から脱却しつつあるし、21世紀も5年過ぎたというこの日本において(歌った当時はいざ知らず)「女郎屋」という言葉にリアリティを持たせるのは非常に困難であるにも関わらず、平成18年になろうとするこの現在においても、言葉の一つ一つが強い説得力を保持し、その裏にあのマキの抱える『女』というものの“怨”を十分すぎるほど理解しながら、まただからといってそれを流用するのでもなく、あくまでも自分なりの表現方法で情念を塗りこめ封じ込めていく。女というものの不如意をぎりぎり下品に落ち込まずやさぐれもせず、ひとつのドラマとして的確に構築し、あくまでもエンターティメントとして提供できている曲は“彼女がうたうこの歌”以外に、私は知らない。
 
VIRTUAL CONCERT2003には、この曲のほか「喝采」「紅とんぼ」などの代表曲からシャンソンなど多岐にわたる。自己紹介に始まり、拍手で終わるこの流れは実際のライブ音源を集めたにしてはリアルすぎる。コンサート会場、壇上にいないその人を思い、それでもいつか帰ってきてくれるんじゃないかとどこかで期待しながら、私は今日もこのアルバムを聴く。
(文中で触れた彼女の歌番組、「ちあきなおみ歌伝説」は12/24NHKBSにて再放送します。見たい人は要チェック)

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