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「素晴らしき哉、人生!」メリークリスマスにはこの映画を [映画系]

素晴らしき哉、人生〈特別版〉

素晴らしき哉、人生〈特別版〉

  • 出版社/メーカー: ビデオメーカー
  • 発売日: 2001/12/21
  • メディア: DVD
メリークリスマス!
と陽気に声を上げられる人もそうでない人も、メリークリスマス!

私はうっかり24日夜に帝都新宿なぞを歩いてしまいましてえらく難渋しました。そらもおアンタ、これからやりまくり的な男女が群れをなして歩いているし、エスカレーターに乗れば、”かわす言葉もなく強く抱きあう恋”のまっただ中にいる方々が列をなしている、そんな状況です。嗚呼、神よなぜ私は一人なのか、とぐだぐだ言ってもしょうがない。なんか喰おうとしても、店の前には長蛇の列がとぐろをまいていたりするし。とりあえずそういう時は家の中でゆっくりとDVDでもみることにしていたほうが実に賢明。そんなわけで実行してみた。 クリスマスに見る映画といえばクリスマスキャロルとかが相場なんだろうけど、私がオススメしたいのはコチラ。「素晴らしき哉、人生」。素晴らしき、と、人生があわさって相乗効果を生んでいるような題名だけで敬遠したくもなるが、とくに私のようなゆがんで曲がって捻くりまくったような人間は、タイトルだけで「ケッ」という気にもなるってもんだ。しかも主演はミスターソフィスティケィティッドことジェームス・スチュアート!あまり期待しないで、まあ行事というか、冬至にカボチャ食べるぐらいのつもりで見てみたのだ、が。

そのお話はざっとこんな具合。

クリスマスの夜、ベッドフォードの街は、ある男への祈りで包まれていた。「神さま、ジョージ・ベイリーにお恵みを……」翼のない二級天使のクラレンスは神さまに呼び出される。「ジョージ・ベイリーはこんなに町の人に愛されている。彼を救わなければならない。お前がその使命を果たしたら、翼をやろう」「ジョージ・ベイリーってどんな人なんです?」クラレンスが尋ねると神さまは彼の一生を走馬燈のようにみせてくれた。

ジョージ(ジェームス・スチュアート)は小さい頃、雪遊びをしていた際、湖に落ちた弟を助けて耳が聞こえなくなってしまった。彼の家は住宅金融会社を経営していたが、街一番の実力者ポッター(ライオネル・バリモア)が経営する劣悪な住宅街の人々に低金利で住宅建設資金を貸し付けていたため、ポッターから睨まれて様々な嫌がらせをうけていた。生活は苦しい。彼は学費を稼ぐため幼い頃から薬屋でアルバイトをしていた。機転で、店主が劇薬を間違えて販売しかけたところをすくったこともあった。

ジョージには夢があった。この小さな街をでて、世界を冒険探検することを。大学を出た後、いよいよその夢のために出発しようとしたその日に、父が倒れ、やむなく彼は会社を継ぎ、弟が大学卒業して家業を継いでくれるまで待つことにした。だが、弟は、ジョージの会社を継げなくなってしまう。失意の彼を励ます幼なじみのメアリーと、ジョージは結婚するのだった。二人で新婚旅行に旅立つ日に、あの世界恐慌が起こり、ジョージの会社でも取り付け騒ぎが起きる。彼は、新婚旅行費用を全て吐き出し、その場をしのぐ。メアリーとジョージの友達は、幽霊屋敷と呼ばれるぼろやを綺麗に飾り付け、ジョージを出迎えるのであった。

やがて”ベイリーパーク”と名付けられた彼の会社の土地には、ポッターの店子が続々と引っ越してきていた。危機感を抱いたポッターは、ジョージを雇い入れようとするが、彼はきっぱりと断った。

4人の子供に恵まれたジョージは第二次世界大戦で障碍のため徴兵されることはなく、街のために尽力する。弟は戦功をあげ、故郷に錦を飾るべく帰郷するその日、12月24日、ジョージの会社で働く叔父は8000ドルという大金を紛失してしまう。会計監査員がジョージに迫る中、彼はその大金を工面できず、街の中をあてどなくさまよう。ついに川へ飛び込もうと決心するが、彼より一足先に飛び込んだ老人がいた。思わず助け出すと、その老人はクラレンスと名乗り二級天使だと自称する。頭のおかしい老人ではあるが、なぜか不意に8000ドルの件を指摘され、ふとジョージは「僕はいない方がいいんだ」と口走る。クラレンスはにっこりと笑うと「では君がいない世界を見せてあげよう」とジョージを誘う……

アメリカではクリスマスシーズンになるとテレビのゴールデンタイムで必ず放映されるそうだ。むべなるかな。ここにはアメリカが理想とするアメリカがある。真面目に生きていても、ポッターのような人間から攻撃されたりすることもある。だが最後には、その真面目に生きていたことの報いがある。 話しのテンポとしては、前半、ジョージの人生を丁寧に掬いとっているせいもあり、かなりモッタリとしている。話題の転換者たる天使クラレンスが登場するのは、後半も押し迫ってからだし。だが、この前半のいささか緩やかすぎる展開がないと、後半の劇的な展開へとつなげられないのは確かであり、緩慢さにだれてきたところで、ユーモラスなシーンが登場するので、退屈はしても徐々にひきこまれていくのがわかる。

ただ、天使が出てきたりして、そのあたりはキリスト教圏ではないとなかなかわかりにくいかもしれない。主人公の危機に神の救いというのはご都合主義という反撃もあるだろう。しかしこの物語は安直なお涙頂戴的寓話とはほど遠く、それはジョージという人が挫折の連続で現在まできている、というリアリティに裏打ちされており、そしてジョージという人物が決して聖人君主ではなく、喜怒哀楽の感情が表に出やすく、嫌なことがあれば車にあたったり、妻子に八つ当たりしたりするシーンで人間くささがあらわれることによって、実に身近な、つまり私やアナタである可能性が容易に高まるようになっている。自己主張の強いアメリカ人、という感じもしないでもないが、彼が去っていく知人に苦しい中から笑顔で餞別を渡したり、困っている人を助けたいという善意を抱いている人物であることも的確に描写されているので、さほど嫌な気はしない。忘れてはならないのは、彼はこれで一時的に危機を脱しただけで、実際にはまだまだポッターから攻撃や中傷誹謗をうけるだろう。妨害もあるだろう。でも彼はこの日、このクリスマスを経験したことによって、その苦難にも耐えていけるだろう。その明るさこそ、クリスマスに尤もふさわしいものだと、私は思う。

「凡庸という特殊な才能を有している希有な俳優」と評されたジェームス・スチュアートが多少無理がありつつも10代から40代へさしかかろうとしているアメリカン・メンをくっきりとした輪郭を持ちながら演じて抜群の存在感をだしている。クラレンス演じるヘンリー・トラバースも茶目っ気のある老人を好演し、こういう天使ならアリかも、というリアリティがありながらもファンタジーあふれる人物を上手に浮かび上がらせている。敵たるポッター役のライオネル・バリモア(ドリュー・バリモアの大叔父にあたる)もアクの強い、自分の分をわきまえた演技で対抗し、おのおのが自分にふさわしい演技を繰り広げる。そういう意味では映画らしい映画、といえる。


地獄への道は善意という礎石で敷き詰められている、といったのは誰だっただろうか。それは確かに事実だろう。だが、クリスマスの一夜、ありもしない物語に希望を見いだす、そんな「奇跡」があってもいいのではないだろうか。人生って素晴らしいと断言できない夜、自分とは不要な人間なんじゃないかとひとりごちたくなる夜、そして人生に希望を見いだしたいというような夜、この映画はそっと寄り添ってくれることだろう。メリークリスマス。あなたの人生に降る星が幾千と連なりますように。
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へー八郎

いいですよねぇ、この映画。
ちょっと日付が変っちゃいましたがメリー・クリスマス!!
by へー八郎 (2005-12-26 02:32) 

る

ありがとう。この映画はほんとにいいですよ。人生に希望がもてなくなったときにみると、浮上のきっかけになるかもしれませぬ。
by (2005-12-26 12:38) 

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