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イージスにでてくる某国とはどこか。 [映画系]

※以下内容は軽いネタバレを含みます。ご注意を。

亡国のイージス

亡国のイージス

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2005/12/22
  • メディア: DVD
 
自衛隊の方は大変だな、といつも思う。しょっちゅう国を憂えてなければ「ならない」ようであるし。クーデターとか起こしまくりだしな。マーダーライセンス牙なんて漫画読んでると、首相をF16戦闘機で襲うなんてシーンがぽこぽこでてきたりする上に、その他、ちょっと気を抜くとすぐ戦国時代へタイムスリップしたり、首都が雲に覆われた後始末をしなくちゃならないし、ニッポンコクにたいして異議申し立てはしなくちゃなんねーしで、もうおねえさん忙しくて相手している暇はないわよ!!!と逆ギレもしたくなるというもの。そんなわけで、無事逆ギレをはたした自衛隊上層部の人間が、某国の特殊工作員(かの国の現状を鑑み、クーデターを起こすために日本へ上陸…って意味不明だが設定がそうなんだから仕方ない)と手を組んでイージス艦を乗っ取り、毒ガス攻撃をちらつかせ、日本国へ、国家とは戦争とはニッポンジンとはなにか!?を小一時間問いつめるべく硬く屹立するわけですな。それを阻止せんとする、たたき上げの自衛官と密命を帯びた特殊工作員、そんな図式で物語が展開されていきます。
 
で、ですね。国を憂いた軍上層部の人間が、突然反旗を翻し、毒ガスを強奪し、それを武器に立てこもり、都市在住者を人質に国家を脅迫するっていうストーリー、どっかでみたことあるな、と思いきや。懐かしの「ザ・ロック」ではありませんか。例の刑務所からでてきたばっかりのジジイが現役の海兵隊員を殴り倒すっていうアレです。
 
ザ・ロック 特別版

ザ・ロック 特別版

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: DVD

国の作戦に従事したのはいいが、多数の死傷者がでた上、極秘任務だった為国家からは一切の賠償がでない。それを苦慮した海軍准将がたちあがり、開発中の毒ガスを強奪し、国家を脅迫するっていう話の展開がそっくりな上、最後、准将達が立てこもるアルカトラズごと爆破しようとする空軍戦闘機に対し、手旗で場内制圧を伝えるFBI捜査官っていうクライマックスまで……。少しは俺ジナルな咀嚼ぐらいしろってなもんです。それにしても「ザ・ロック」の反乱准将ハメルを演じたエド・ハリスの強固な意志が全面にでつつも、その裏にある知性を感じさせる顔(つまり厳然たる意志が知性を抑制しているような顔つき)に比べ、我らが寺尾聰のルビーの指輪然としたしょぼくれさ加減がどうにも。サニー千葉とかライダー藤岡弘なんかがまだ説得力のある顔をしている気がする。顔って大事だね。ちなみにハリウッドつながりでいえば、映画編集にトゥルーマンショーのスタッフが参加されているようですが、そのエキスはどのあたりに漂っているのか皆目見当がつきませんでした。ジム・キャリーが真実に気づいて逃げる、その実況中継を見てる観客がジムがんばれーと応援する姿と真田広之が必死に追っ手をかわすあたりにかすかに重なるかもしれない、もしくは防衛庁でモニターを注視している日本国首脳のお歴々の姿とか。あとはよくわからん登場人物がウントコショとでてきて謎の行動(突然行われる某国女性工作員と防衛庁直属の自衛官との水中接吻など)をするところとか。そんなエッセンスを探して楽しむのがこの映画の真の愛好という姿なのでしょうか。
 
そんなわけで物語自体の穴はいいますまい。だがどうにも致命的かつ我慢できない点は、前述したことの繰り返しとなるけれども、役者の顔にリアリティがない、ということ。とにかく中井貴一が某国工作員に全く見えないのはどうすればいいのだろうか。例えば日本人を表す記号として、眼鏡、出っ歯、カメラ、お辞儀、芸者なんてのがあるように、この際中井貴一も某国のなんていう公式サイトの説明でお茶を濁すなんてことはせずに、役者魂を炸裂させて、火病するとか特殊メイクでエラつけて「チョッパリよ、これが戦争ニダ」などというぐらいはするべきだったんじゃないでしょうか。おまけに、きいちの役名「溝口」が一瞬「水島」に聞こえたらアナタ、竪琴ひいてビルマにこもっていた人が平成の世、亡国を憂いて甦ってきたようでステキ。(それにしても、きいちはデビュー作“連合艦隊”の特攻死から幾星霜、どんどん死に方が悪くなっている気がする。今回はゾンビみたいになってるし)そもそも、クーデターの発端となる「防大生がHP(……)に載せた論文」っていうのも、「日本人は恥を失った」なんちゅうありがちで、ソースなしの断定が根拠なく続くというまさに「それなんてオモシロマンガ?」というシロモノ。反乱将校は火病でも発動しているのか、これを新聞掲載しろと内閣に要求するわけですが、こんなものが載った日にゃ、死人に鞭打つどころかさらし者にしているに等しいものです。親ばかっていうのは嫌だねえ。だいたいマヌケの連鎖は続くモノで、真田広之はクーデター失敗に終わった艦内にむけ「みっともなくてもいいから生き延びろ」みたいなことを言うのですが、いやあでもクーデターというか刑法第77条内乱罪適用されると、首謀者は死刑または無期禁固だからなあ……。この「亡国のイージス」の場合、これは関係ないからいっか。
 
そういや時代劇ドラマ「必殺必中仕事屋稼業」の中で、緒形拳が死に急ごうとする草笛光子に対して「無様に生き続けましょうや」と声をかけるシーンがあるのだが、まあそういうことで明日も生きて生きて生きまくれといいたいところだけれども、でも「GUSO」というこの映画のキーポイントとなる毒ガスは、琉球方言で言うと「あのよ」だしなあ、と深い余韻を残して、とにかく見るならまずは「ザ・ロック」をみてからにしてほしいと切にお願いして、では、また。
 
※この文章は実際の団体、人物、国家、民族、その他のいかなる問題とも全く無縁な場所で書いております。なんの意図もございませんのでご了承ください。
 

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コメント 4

へー八郎

鋭いご指摘っすね(笑)
同感っすf(^_^;)
そうそう寺尾某じゃなくて高倉健さんなら如何っすか?
by へー八郎 (2005-12-26 02:39) 

る

うーむ。健さんか。確かにいいかもしれませぬ。個人的には(総理大臣役だった)原田芳雄でもいいかも。総理大臣寺尾、反乱将校原田っていう組み合わせも見たかったな。
by (2005-12-26 12:37) 

南郷力丸

 叛乱を起こす理由が、息子を殺されたから、じゃ寺尾聰で充分でしょう。
 ザ・ロックじゃ奪還成功の合図が決まっていて、それもサスペンスを盛り上げてたのに、寝ころんでの手旗信号って、絵面が間抜けすぎですな。
 総理大臣丹波哲郎、叛乱将校鳥肌実ってどう?
by 南郷力丸 (2006-01-02 01:14) 

る

この後結構反乱将校と総理大臣は誰がいいのかなどとキャスティングネタで盛り上がってました。個人的には総理大臣丹波哲郎、反乱将校若林豪(もしくはサニー千葉)、監督は佐藤純弥そしてゲストはOJシンプソンもしくはチャールトン・ヘストンという布陣で臨んでほしかったです。なんというか手旗なんていう象徴であんな最後の最後で白状しなくても、この布陣なら最初から見るほうにも覚悟ができると思うのですがね。
by (2006-01-10 17:25) 

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